「無名作家にとって最初のハードルは、自分の作品をたくさんの人に読んでもらうことです。だから無料でマンガを公開しているのに、収入を得るチャンスもある。そんなうまい話があっていいのかなと(笑)」
会社員・マンガ作家 アイタローさん

「Amazonがマンガで新しいことを始めている。それを知ったらワクワクして、自分の作品をKindleで出版しようと思いました」

そう話すのは、一般企業に勤めながら執筆活動を続けるマンガ作家、アイタローさんだ。2018年12月にKindleで公開した『江戸時代の経済入門!』は、コミカルなタッチで日本の経済の歴史をわかりやすく理解できる作品。「Kindleマンガの売れ筋ランキング(無料)」では、プロのマンガ作家による作品を含めた数千作品が名を連ねる中で、1位を獲得した。

2018年7月に始まった「Kindleインディーズマンガ」は、マンガ作家が自分の作品をKindleストア上で公開できるプログラムだ。マンガ作品に特化したシンプルなシステムで、作品公開までのプロセスが簡潔なことが特徴だ。

Amazonの取り組みはこれだけで終わらない。「インディーズ無料マンガ基金」を創設し、本プログラムの参加者に向けて、作品の人気度に応じた分配金を提供している。2018年は7月から12月までの約6カ月間で2,000万円以上が分配され、40以上の都道府県の数百人の作家が、KDPでインディーズマンガを出版している。さらに2019年12月までの基金の継続が決定し、今年1月からの2019年分として年総額5,000万円を用意する。Amazonは「日本全国どこにいてもマンガを描いて出版したい」という想いを抱く作家をサポートしている。

Kindleで可能性が広がるマンガ家のキャリアプラン

本プログラムで成功を収めたマンガ作家のひとりであるアイタローさん。意外にも、自分でオリジナルの作品を描いて発表したのは今回が初めてだという。Kindle出版に至るまでには何があったのか。

「学生の頃から独学で絵を描いていました。ゼロからコンテンツを作りたいという思いがあったので、卒業後には脚本教室や作詞教室に通って創作を試みました。でも、正直ずっと何を描いていいのかわからなくて。現在の執筆テーマである『経済の歴史』に興味を持ったのはつい1年前のことです」

きっかけは2018年1月、堀江貴文氏らがフェローとして参加するオンラインサロンのイベントに出席したこと。その時のトピックが経済の歴史であったことからアイデアを得たという。

新卒で証券の業界に入り、現在も証券会社で勤務するアイタローさんにとって、「経済」はずっと身近にあるテーマだった。さらにもともと好きだった「歴史」の要素と掛け合わせれば、自身の専門性を生かせる得意分野になる。そう気がついた後は夢中になって文献を読み込み、週に一度、SNSで4ページのマンガを描いて公開した。

Kindleで可能性が広がるマンガ家のキャリアプラン

少しずつ執筆を進めたマンガが一冊の本『江戸時代の経済入門!』としてまとまったのは同年の11月。電子書籍と紙書籍の両方を作成して即売会イベントに出展した。しかし、当日売れたのは数十冊程度。毎週続けていたSNSでの投稿も、読者からのリアクションが10件に満たないこともあり、伸び悩みを見せていた。

「私は過去にマンガの賞をとったわけでもないですし、作家としてのネームバリューが全くないところからのスタートです。そうなると、どこに出しても基本的には読んでもらえません。かけだしの作家が最初に抱える課題ですね。自分の勉強のために描いていたので、そういうものだと当時は割り切っていました」

Kindleで可能性が広がるマンガ家のキャリアプラン
『江戸時代の経済入門!』より

そんなアイタローさんの認識が180度変わったのは、Kindleインディーズマンガとの出会いによるものだ。本プログラムの開始当初から注目し、参加を決めていたという。電子書籍の完成後、満を持して12月初旬に最初の作品を登録。すると公開後たちまちに読者を増やし、爆発的な人気を得た。

「まさかこんなことになるとは思わず、驚きました。コンテンツの内容はSNSや即売会で発表したものと同じ。」

また、Kindle独自のレビューシステムも創作活動の大きな励みになっているという。「読者からの声によって、マンガを描くことへの意識が変わりました。今まで自分のためだけに手探りでやっていた活動が、他の誰かの学びにつながるのだと実感したのです」

将来的にはマンガ作家として独立し、生計を立てていきたいと言うアイタロー さん。今はそのための土台を築く期間だ。初めての分配金を使って取材旅行に行き、続編の執筆に役立てたいと笑顔で話してくれた。

「Kindleで無料マンガを公開したことで、多くの読者に作品を知ってもらい、ランキングで1位を獲得できました。分配金をいただけることはもちろん嬉しいですが、これらの実績は私にとってお金以上に価値のあることです。出版のスタンダードが根底から変わる状況の中で、作家自身が発信力を持って活動していくには、このチャンスを利用しない手はないと思います」

アイタローさんの『江戸時代の経済入門!』はこちらをご覧ください。

Kindleインディーズマンガについて詳細はこちらをご覧ください。