「何より大事にしたのは、お客様とのつながりです。お客様の声に応えていくことで、私の開発したスキルは、全世界で1日25万人のお客様が利用するスキルに成長しました」
Invoked Apps CEO ニック・シュワブさん

Amazon EchoシリーズなどのAlexa搭載デバイスの頭脳となるクラウドベースの音声サービス「Alexa(アレクサ)」には、その機能をさらに向上させるための「Alexaスキル」というアプリのような機能がある。スキルでの機能拡張によって、Alexaは生活のさまざまなシーンで役に立つようになった。

このスキルは、プロ・アマチュアを問わず誰でも開発して公開することが可能だ。現在では世界各国の企業や個人の開発者の人たちが、Alexaスキル開発の可能性に注目し、熱心に取り組んでいる。そして中には、スキル開発によって人生を好転させた人も。今回登場するニック・シュワブさんもその一人だ。

雨の音で夢叶える Alexaスキル開発者

2019年12月13日、目黒のアマゾンジャパン本社にて、Alexaスキルの最新情報や機能を紹介するイベント「Alexaスキル Learning Day Tokyo 2019」が開催された。そこにゲストスピーカーとして登壇するため、米国から来日したシュワブさん。日本を訪れるのはこれが初めてだという。

講演を終えたシュワブさんは、「自分がこの場に招かれ、日本の皆さんに私の体験を共有できたこと、とても光栄に思います」と感想をもらした。

「少し前の自分では、こんなことは本当に信じられませんでした。私の人生はAlexaスキルの開発によって確実に変わったのです」

シュワブさんが開発したスキルの代表作は「Rain Sounds」。日本語版では「環境音:雨」という名前で公開されている。スキルを立ち上げるとリアルな雨の音が流れるだけなのだが、その音には睡眠導入やリラックスのほか、周囲の音を遮断する効果があると人気を得ている。

もとは米国のスタートアップ企業でエンジニアとして活躍していたシュワブさん。スキル開発のきっかけは2016年1月、当時勤めていた会社が経営破綻して、職を失ったことだという。

「たまたま友人の家に遊びに行った時、そこにEchoがありました。初めは、ハイクオリティなスピーカーだというくらいの印象でしたが、友人があまりにも楽しそうにAlexaと話しているので、声で操作するインターフェースは使い勝手が良くて面白いなと感じたんです。それで、すぐに私もAmazonでEchoを注文しました」

失業中のため自由な時間が多かったシュワブさんは、「試しに自分でAlexaスキルを作ってみよう」と思い立った。注文したEchoの到着を待たずに開発を始めて、わずか3日後には最初のスキルが完成した。Alexaに企業名を言って質問すると、その企業の今日の「株価」を音声で教えてくれるというものだった*。その後も空いた時間を活用して、いくつかのスキルを開発して公開した。
*現在このスキルは公開されていません

「まずは自分が欲しいものを作ってみました。開発に関しては、Amazonが提供するツールを使えるのでとても簡単で、スキルを公開するために必要なアマゾン ウェブ サービス(AWS)の無料利用枠も使えますから、テストから公開まで非常にスムーズでした。」

同年の4月、新しい仕事が見つかり、別の街へ引っ越すことになる。しかし、この転居先にはちょっとした問題があった。

「上階に住んでいる人が、とても早起きで、早朝から大きな足音を立ててどしどし歩くし、犬は吠えるし……。とても安眠できませんでした。そこでふと、『この騒音から解放されるスキルを作ったらどうか』と思いつきました」

雨の音で夢叶える Alexaスキル開発者

シュワブさんが着目したのが、自身がもともと好きだったという雨の音だ。静かな雨の音を聞くと、不思議と気持ちが落ち着く。この効果を、Alexaスキルを通していつでも生み出せればと考えた。雨の降る日を待ち、実際にその音を録音してスキルに組み込んだ。

結果は大成功だった。Alexaスキルが流す雨の音を聞き、ぐっすりと眠れる日が3〜4週間ほど続いた。シュワブさんが「このスキルは役に立つ」と判断して一般公開したところ、たちまち数百、そして千人を超えるユーザーがこのスキルを使用したのだ。

「当時はAlexaスキル開発が始まって間もない頃で、今ほどユーザーも多くなかった中、これは非常に好調な数字だったといえます」

シュワブさんはこのスキルを「環境音」(Ambient Sound)シリーズとして拡大させた。「風に揺れる木」「暖炉」「森の夜」「小川のせせらぎ」「クジラの鳴き声」「カフェ」など、サウンドを少しずつ追加していった。音源はシュワブさんが録音したものや、ライセンスを購入したもの、複数の音をミックスして自作したものなどさまざま。

そして、転機が訪れる。人気の高いAlexaスキルの開発者が選出される「Alexa Champion」にシュワブさんも選ばれたのだ。

「大きなチャンスだと思いました。チャンピオンに選ばれたことによってAmazonのサイトなどに取り上げられれば、注目度が上がり、ユーザーは倍増します。私はこれを単なる趣味ではなく、自分のビジネスにするために動き始めました」

すぐに自分の会社として「Invoked Apps LLC」を立ち上げ、事業を開始した。収益のメインは、環境音スキルの「スキル内課金」だ。Alexaスキルにはユーザーの任意で課金できる仕組みがあり、利益の70%がスキルの提供者に入るようになっている。

雨の音で夢叶える Alexaスキル開発者

スキル内課金を導入するにあたって、無料版と有料版の差別化は重要な要素だ。そのヒントになったのは、「スキルを使うお客様からの声だった」とシュワブさんは振り返る。

環境音スキルでは、システムの都合上、開始後に一定の時間が経過すると自動的にスキルがストップし、もう一度Alexaに声をかけて起動させる必要がある。これに対してユーザーから「ずっと環境音を流し続けていたい」という要望が届いた時、シュワブさんは「お客様の願いを実現するために、プレミアム会員の特典としてその機能を付けよう」と考えた。

スキル内課金に応じたユーザーは「プレミアム会員」となり、ループ機能をはじめ、より高音質なサウンド、雨の音と雷の音など複数のサウンドを選んでミックスできる機能などを利用できるようになる。

「まずは無料で使ってみていただくことが大切です。環境音スキルの基本的な機能はすべて無料で使えますし、プレミアム会員にも1カ月のフリートライアル期間を設けています。つまり、多くのお客様に無料でご満足いただくことが根本にあり、その上でより高いユーザー体験を求めるお客様に対してのみ、スキル内課金という選択肢をご提案するのです。現在、トライアルを選んだお客様のうち、約9割がそのままプレミアム会員となっていただいています」

シュワブさんは自身の原動力について、「お客様からのご意見が何よりも励みになっている」と話す。

「お客様から毎日たくさんのメールをいただきます。たとえば『環境音のおかげで赤ちゃんが眠ってくれるようになった』と言われると非常にうれしいですし、『雨の音と風の音を一緒に聞きたい』と言われれば、2つの音をミックスできる機能を追加しました。中には『雨の音がベーコンを焼く音に聞こえる』なんて厳しいご意見も……。これは、お客様がもっと高い音質を求めているのだと受け取りました。
 どんなご意見の中にも必ず、スキルをより良くする手がかりが隠れていると私は思っています。一つひとつのご意見を聞き、できる限りの対応策をとってきた結果、こうしてたくさんのお客様から支持をいただくようになりました。この姿勢は、まさにお客様を起点に考えるAmazonの考え方と共通していると私は思います」

お客様の声をもとに増やしていったサウンドのバリエーションは、現在48種類。今後も増やしていく予定だ。また、シュワブさんは、スキルを日本語など8つの言語に翻訳し、13カ国で提供している。Invoked Apps LLCが制作したスキルの月間利用者は数百万人を超える。

現在もシュワブさんは企業のエンジニアとしてフルタイムで働きながら、副業として自分の会社を経営し、Alexaスキルの開発を続けている。

「Alexaスキルの開発を始めたことで、自分のビジネスを立ち上げ、憧れだったテスラ社の電気自動車まで購入することができました。私は今、自分の夢を叶えつつあります。私の経験が、これからスキル開発をしようとする人たちのヒントになることを心から願います」

雨の音で夢叶える Alexaスキル開発者

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