より良い製品を作り、
箱根寄木細工のブランド力を
もっと高めたいと思います
箱根丸山物産 代表取締役 丸山一郎さん

「箱根細工はもともと日本伝統の建築で用いられる、釘なしで木と木を継ぐ組木を使った工芸品です。実用的な技術から、箱根の多様な木材を使って模様を描きだしたり、手順を踏まなければ開けることができない秘密箱/からくり箱の技術に発展してきました。今は、箱根地域が国立公園に指定されたため、箱根の木は材料にできなくなりましたが、日本古来のホオノキ、ミズキ、ケヤキ、桜などを使うことで、着色しない自然な色で模様を作り出しています」

約200年の伝統があるとされる箱根寄木細工。その製造・販売をしている箱根丸山物産代表取締役の丸山一郎さんは慣れた口調でそう話し始めた。

芦ノ湖の向こうに富士山
芦ノ湖の向こうに富士山が見える

芦ノ湖のほとりにある箱根関所跡、そのすぐ近くに構える箱根丸山物産の店舗内には実演コーナーがあり、箱根寄木細工の魅力を観光客たちに伝え続けている。丸山さん一家の寄木細工にかける情熱は、店に対面した場所に「関所からくり細工美術館」もつくったほどだ。

箱根寄木細工の技を世界に伝えて守る
店内の実演スペース

木材と木材をぴたりと合うように鉋で削り、数種を組み合わせることで、生み出される寄木細工。その精緻なつくりは、製法を知るとその技術の高さに驚かされる。箱根駅伝の往路優勝のトロフィーも寄木細工で制作されているなど、箱根にとって寄木細工は世界に誇る伝統文化だ。

箱根寄木細工の技を世界に伝えて守る
「からくり箱」。箱を開けるためにはからくりを解かなくてはならない
箱根寄木細工の技を世界に伝えて守る
関所からくり美術館に展示されている様々な種類のからくり箱

箱根丸山物産の原点は、一郎さんの祖父が昭和初期に箱根神社のすぐそばで始めた木工品の土産物店。祖父が第二次世界大戦で戦死後は、祖母が店を守り、父へと受け継がれるとともに、寄木細工専門店となった。

今から30年ほど前、美術系大学に入学した一郎さんは、箱根寄木細工があまり知られていないことに愕然とする。「同じ伝統工芸の世界でも、人間国宝や、何百年続いている職人の家の息子が同級生にいたので、箱根寄木細工をブランドとして高め、もっと知られるようにしなければならないと、当時から考えるようになりました」

大学を卒業後、物流会社に就職。その数年後に家業を手伝う決断をする。子どものころから触れてきた寄木細工の技術や専門知識を一通りマスターした後、父に付いて経営を学ぶようになった

箱根寄木細工の技を世界に伝えて守る
寄木細工の加工手順。模様となる部材を鉋(かんな)で成形する
箱根寄木細工の技を世界に伝えて守る
削りだした部材を組み合わせて接着する
箱根寄木細工の技を世界に伝えて守る
一番手前が最初に作る部材。後列は部材を組み合わせた状態 。右側の市松模様が組み合わせたものを鉋で削った状態
箱根寄木細工の技を世界に伝えて守る
貼り付けた部材を鉋で削り一枚の薄い板状にする

箱根寄木細工の技を世界に伝えて守る
からくり箱
箱根寄木細工の技を世界に伝えて守る
秘密箱。中には20回以上の手順を踏まないと開かないものも

山中の観光地での販売は、来店できる人が限られてしまう。父の代から始めたデパートなどでの実演販売は好評だったが、店を空けなくてはならないため、それほど多くの時間を割くことはできなかった。

もっと多くの人に製品を知ってもらう方法はないか。そう考えた一郎さんはインターネットでの販売を提案する。しかし、周囲からは猛反対された。1992年頃のことだった。

「父たちには、インターネット販売で売れるわけがないと言われました。それでけんかもしましたよ」

寄木細工は、同じ模様の製品であっても、天然の木を使っているからこそ1本ずつ表情が微妙に異なる。その魅力がインターネットで伝わるはずがないというのが、反対の理由だった。

「インターネット販売はこの先どうなるのか、私自身も半信半疑でしたが、物流が変わるだろうとは感じていたので、自社でインターネット販売を始めました。でも最初はほとんど売れませんでした」

それでも一郎さんは時代の変化を信じ、途中で投げ出すことはしなかった。5~10年をかけてインターネットが一般に普及し始めると、売り上げが次第に伸び始め、2010年に販売を開始したAmazonでの売り上げも伸びていった。そしてAmazonが商品の保管・受注・出荷・カスタマーサービスを代行するフルフィルメント by Amazon(FBA)を利用することで、さらに売り上げに弾みがついた。観光地での販売は季節や天候などに売り上げが大きく左右されるが、インターネット販売があることで、その影響は少なくなっている。

「日本全国から注文をいただけるようになり、本当にうれしかったです。箱根は山の中ですから発送にも時間がかかっていましたが、FBAを使うことでその問題も解消できました。インターネットで商品を知ったお客様がご来店されることもありますし、逆に時間がなくて店舗ではじっくり見られなかったというお客様がインターネットでご購入されることもあります」

現在では、Amazon.comでも販売を行い、アメリカ国内だけでなく、世界各地のお客様が商品を購入されているという。それに合わせて、日・英・仏・中・韓・独・西、7か国語表記の説明書を同封する心遣いもしている。

箱根丸山物産店舗
箱根丸山物産店舗

「Amazonを通して情報発信ができているためか、以前は店舗でも売れる頻度が少なかった高価格帯の商品もAmazonではよく売れるようになりました。それだけ幅広いお客様に商品の良さを理解していただけているのだと思います。そうした商品が売れることで、より良い製品を作り、箱根寄木細工のブランド力をもっと高めたいと考えています。これからもっとアメリカでの販売が伸びていくのではないかと感じています」

2年前に父の跡を継ぎ、社長となった一郎さん。会社の代表として、次世代の育成に取り組んでいる。職人の高齢化・引退が進むなか、ここ数年は箱根寄木細工を知り、作り手を目指す若者も出てきているという。

「インターネットを通じて寄木細工を知ってくれた美術系大学の卒業生2名が来春入社する予定です。若い世代から次の担い手が育ってくれることを今から楽しみにしています」

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箱根丸山物産丸山一郎さんを紹介しているAmazon「にっぽんをつなぐ」のビデオも併せてご覧ください。

Amazon 「にっぽんをつなぐ」- 寄木細工専門店 箱根丸山物産(神奈川県足柄下郡)丸山 一郎氏

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