日本では政府、民間そして地域をあげてデジタル化を加速させ、さまざまな社会課題を解決しようというデジタル・トランスフォーメーション(DX)の動きが活発化しています。中小規模事業の皆さんにおけるデジタル化をテーマにした第4弾は、沖縄文化を実店舗そして全国に向けたオンラインで発信し続ける事業者様のストーリーです。

新型コロナウイルスが猛威を振るう中で、特に影響を受けているのが観光・宿泊業です。日本政策金融公庫が2020年6月に行った調査によれば、同年2月~5月の売上が前年同期比で半分以上減少したというホテル・旅館業は80%以上に上ります。日本の中でも観光産業に力を注いでいることで知られる沖縄も例外ではなく、2020年に沖縄を訪れた観光客数は前年比63%減(沖縄県「入域観光客数」)と、沖縄経済に大きな打撃を与えたことがわかります。そんな中、沖縄の伝統工芸品を含むさまざまな雑貨を扱うゆいまーる沖縄株式会社は、自社ECサイトへのこだわりによって、全国に新しいファンを増やしながら事業としても成長しています。コロナ禍で沖縄文化を発信し続けるゆいまーる沖縄の取り組み、そして、その原動力となった想いをご紹介します。

職人と直接つながり、沖縄文化の魅力を発信

沖縄県うるま市にある小さな工房。真剣な眼差しでシーサーを作る職人の名波均さんを、ゆいまーる沖縄直販部小売課の松田哲郎さんが固唾をのんで見守っています。ゆいまーる沖縄は、県内の多くの職人や生産者と直接つながり、沖縄県内の伝統工芸品や民芸品、食品などを幅広く取り扱う地域商社です。島尻郡南風原町にある実店舗「ゆいまーる沖縄 本店<Storage & Lab.>」、那覇空港内の実店舗「Dear Okinawa.」、ECサイト「ゆいまーる沖縄<Online>」等を通じて、沖縄文化の魅力を全国に発信しています。

「シーサー職人の名波さんとは15年以上のお付き合いになります。名波さんのシーサーは、型を使わずに一から作り上げていく手びねりという技法で作られたもの。非常に精巧で躍動感があり、完成したシーサーには得も言われぬ迫力があります。シーサーは魔除けとして県外の方からも人気で、ECサイトから親子二代にわたって購入してくださる方もいらっしゃるんですよ」

そう語る松田さんは、地元・沖縄の出版社で雑誌制作に携わる中で故郷の伝統工芸品の魅力に引き込まれました。その後、雑誌制作の仕事からは離れるも、「沖縄文化の魅力を広めることに関われたら」という想いを持ち続けていたところ、縁あって、ゆいまーる沖縄と出会い6年前から勤めています。職人や生産者にとっても、ゆいまーる沖縄は全国に作品を届けてくれる貴重な販路になっています。

にっぽんの中小規模事業のデジタル化を応援【その4】
沖縄文化の魅力を発信する、ゆいまーる沖縄の想い
ゆいまーる沖縄株式会社 直販部 小売課 松田哲郎さん

お客様のひと言が工芸品販売のきっかけに

名波さんの工房をあとにして「ゆいまーる沖縄 本店<Storage & Lab.>」に戻った松田さんは、ECサイトの注文処理や商品ページの制作、店頭での接客などの業務にあたります。2015年にオープンしたここ「ゆいまーる沖縄 本店<Storage & Lab.>」には、やちむん(焼き物)や琉球ガラス、染物や織物など、数え切れないほどの商品が陳列されています。やわらかな日差しを浴びてきらきらと輝く琉球ガラスや、目にも鮮やかな模様が描かれた染め物など、思わず手にとりたくなるアイテムばかり。実は、ゆいまーる沖縄は1988年に創業した当初、食品の卸販売を手がける会社だったそうです。

「創業は、現在のように沖縄が観光地として人気を博すよりずっと前のことです。当時はいわゆる『本土復帰』から20年も経っておらず、沖縄出身者が差別を受けたり、ネガティブな印象を持たれたりする時代でした。そこで、今は亡き創業者が『沖縄の自立に寄与する活動をしたい』と決意してゆいまーる沖縄を創業しました。当初はもずくやポーク缶といった食品を県内外に卸す事業から始まったそうです」

事業が軌道に乗った1990年代半ば、ターニングポイントが訪れます。企業の見本市『沖縄の産業まつり』で食品を販売するにあたって、お客様の目を引くために沖縄の民具を店先に飾ったところ、『これはいくら?』『売ってほしい』という問い合わせが相次いだのです。「もしかして、沖縄の民具や工芸品に需要があるかもしれない」。このことが沖縄の工芸品を取り扱うきっかけになりました。

沖縄は古くから貿易の拠点として栄え、世界中の様々な地域の影響を受けながら独自の文化が発展し、たくさんの工芸品が生まれてきた土地。国や県に指定されている伝統工芸品の数は全国有数で、伝統工芸品の宝庫ともいえます。

「沖縄県で国に指定された伝統的工芸品の品目数は東京都、京都府についで全国3位です(2021年1月15日時点)。陶器などの「やちむん」に、琉球漆器、琉球びんがたや琉球絣といった染織品など、沖縄の各地域によって多彩な伝統工芸品があり、どれも繊細な技術で手間を惜しまずに作られています。今でも魔除けとしてシーサーを玄関に置く人も多いですし、暮らしの身近なところに伝統工芸品が息づいています」

沖縄の物語を伝えるアイテムづくり

ゆいまーる沖縄は、職人との直接のつながりを通して伝統工芸品を届ける一方、オリジナルブランドの制作にも力を入れています。やちむんや琉球ガラスのシリーズ「serumama」などのブランドを企画・運営しています。そして、「島の根っこ」である自然や文化をテーマにしたデザインブランド「シマノネ」は、沖縄県立芸術大学とデザインを共同開発し、若い世代に沖縄の自然や文化の魅力を受け継ぐ取り組みにもなっています。

「学生さんが生み出したデザインの1つに、夕陽がきらきらと反射する海の水面をイメージした『島の夕暮れ』というものがあります。これは学生さんの故郷である渡嘉敷島(とかしきじま)で、幼い頃、窓の手すりにもたれかかって、海にゆっくり沈む夕日をじーっと眺めた光景をモチーフにしたそうです。デザインを作るときに、大好きだったその光景がふっと浮かんできたと聞きました。沖縄にまつわる自然、文化への想いや記憶をアイテムに込めることで、沖縄の物語を広く届けたいと思っています」

「シマノネ」のモチーフには、ほかにも家庭の懐かしの味を思い出させる「おじーのヘチマ」や、道端に咲き乱れるハイビスカスを描いた「吉祥ハイビスカス」など、自然や文化に根ざした柄があります。こうした一点一点のアイテムに込められた物語は、ゆいまーる沖縄のECサイトにもしっかりと反映されています。

ECサイトでは、商品の魅力をより深く発信することができる

ゆいまーる沖縄が自社でECサイトを立ち上げたのは2016年。それまではECモールで販売を行っていたそうですが、自社サイトに切り替えたそうです。

「アイテムに込められた物語や価値をきちんと伝えたいと思ったとき、自社のECサイトが不可欠だという結論に至りました。沖縄の行政の要請を受け、工芸業界の方と一緒に商品の企画や開発をすることが増えてきたこともあり、ものづくりに込められた想いを丁寧に紹介することで、沖縄の価値をもっと伝えたいと思ったからです」

ゆいまーる沖縄のECサイトを見てみると、商品に込められた想いはもちろん、つくり手の紹介があり、どんな人がどんな想いで作ったかが伝わってきます。「店頭ですべての商品を説明することは物理的なスペースの制約があって難しいですが、自社のECサイトなら一つひとつに丁寧な解説を付けられることに利点を感じています」と松田さん。実際、細かく書き込まれた物語や解説に共感して購入する方が多いようです。また、ECサイトでのスムーズな決済も購入の後押しとなっています。

「決済方法を検討する中で、2017年にAmazonのID決済サービスAmazon Pay(アマゾン・ペイ)を導入しました。決め手は、使いやすさと安心感です。Amazon Payなら、Amazonのアカウントを使って決済ができるので、あらためて氏名や住所、クレジットカード番号などを入力する手間が省けますし、自分で使ってみて使いやすさに納得したことも大きいです。ネット詐欺を身近に感じる出来事を経験し、セキュリティの重要性を肌で感じていたことも導入の後押しになりました。初めて見るサイトに個人情報を入力するよりは、いつも使っているAmazonアカウントのIDが使えることの安心感は大きいですよね。今では、ECサイトでお買い物される半分以上のお客様にAmazon Payをご利用いただいています」

コロナ禍の今だからこそ、ECサイトで新しい物語を紡ぐ

沖縄の行政と連携し、伝統工芸品を中心とした新商品の開発や工芸職人の人材育成にも携わっているゆいまーる沖縄。沖縄の伝統工芸品と日本全国をつなぐハブのような役割を果たしている一方で、松田さんは「伝統工芸品に限らず、幅広く沖縄の魅力を伝えたい」と言います。

「ゆいまーる沖縄のミッションは『沖縄の価値を創造すること』で、工芸品を扱う会社というわけではありません。沖縄県産のものであればジャンルを問わず、食品や酒類なども扱っているのはそのためです。新型コロナウイルスの影響から、ミッションへの想いはより強くなっています。新型コロナによって観光客が激減し、困っているのは私たちだけではなく、職人や生産者の方も同じです。実際、『ゆいまーる沖縄 本店』を訪れる観光客がゼロに近い月もありました。一方で、ECサイトはアクセス数も売上も伸びています。そこで、なんとかして沖縄の力になりたいという想いから、新型コロナの影響による事業者向け大口貨物便が欠航したため、枝豆を出荷できなくなった宮古島の農家さんと手を組み、ECサイトで枝豆販売を行いました。それから、コロナ禍で売上が落ちた琉球ガラスをはじめとする工房のオンライン販促イベントも開催しました。ECサイトを使えば全国に販路が開かれるので、職人や生活者が助け合い、少しでも互いの力になれたらと思っています」

コロナ禍でお客様との新しい物語が生まれています

「新型コロナウイルスの流行がなかなか終息せず、私たちも気が滅入ることが多かったのですが、少しでもお客様の心が温まるようなことはできないかと考えました。そして、商品を送る際、『一緒に頑張りましょう』とメッセージを添えて、サンと呼ばれる沖縄の魔除けを同梱する取り組みをしたことがありました。後日、SNS上を検索すると、そのメッセージを写真に撮って投稿して『沖縄に行きたい気持ちがさらに大きくなった』『幸せな気持ちになった』とコメントしてくださっているのを見つけました。ECサイトを通じて、商品だけではなく、プラスアルファの想いも届けられたことは、本当に良かったと思います。沖縄の工芸品は実用性以上に独自の色合いやデザイン、文化的な背景を楽しむ部分が大きいと思います。これからも、沖縄文化を発信すると同時に、少しでも使う人が元気になれたり心がやわらぐようなアイテムを届けていきたいと思っています」

「ゆいまーる」は「助け合う」という意味の沖縄の言葉。「ゆい」は「結ぶ(結い)」を意味します。その言葉どおり、ゆいまーる沖縄は助け合いの精神の下に沖縄の職人や生産者を結び、お客様とも深く結びつき、これからも新たな物語を紡いでいくことでしょう。

にっぽんの中小規模事業のデジタル化を応援【その4】
沖縄文化の魅力を発信する、ゆいまーる沖縄の想い

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