Amazonの「ほしい物リスト」は個人のお客様だけでなく、災害支援を求める自治体にも活用されています。なかでも千葉市は2019年から災害だけでなく、動物公園や児童養護施設への支援にも積極的に活用し、新しい寄付文化を築くヒントにもなると注目されています。活用の様子や反響について、熊谷俊人市長、千葉市動物公園副園長の清田義昭さん、児童養護施設ほうゆう・キッズホーム施設長の馬場敏さん、乳児院エンジェルホーム施設長の古里美夏さんにお話をうかがいました。

災害支援だけでなく、動物公園や子どもの支援にも活用

「ほしい物リスト」は、Amazonで気になる商品をリスト化できる機能で、リストは公開、非公開が選べ、たとえば、家族や友人に公開して、プレゼントしてほしい物を伝えることもできます。

自治体がAmazonのほしい物リストを活用するときは、災害支援がきっかけになるケースが少なくありません。必要な時に、必要なものを必要な数だけ、必要としている場所に届けることができるのが、ほしい物リストです。その便利さに千葉市の熊谷俊人市長が目を向けることになったのも、2018年に西日本豪雨に見舞われた岡山県総社市を訪問した際、被災者支援にAmazonのほしい物リストを活用したエピソードを片岡聡一市長から聞いたのがきっかけでした。

「その手があったか、と盲点を突かれた気持ちでした。私自身、Amazonのほしい物リストを備忘録代わりに使っていたからです。危機管理課にアイデアを伝えたら、職員もメリットをすぐに理解してくれて、災害時にスピーディに活用するにはどんな準備が必要か、研究を始めてくれました」(熊谷市長)

千葉市は熊谷市長が就任して以来、民間企業と連携するなど、新しいアイデアを職員が積極的に提案する土壌ができていました。偶然にも、災害支援に生かす取り組みが始まったのと同時期に、千葉市動物公園からもほしい物リストを動物の飼育環境や来園者サービスの向上に使いたいという提案が寄せられたのです。

「私からは『それはいい、どんどんやってください』とOKを出しました。結果的に、動物公園が先行して『ほしい物リスト』を活用したことが、災害支援に生きることにもなりました」(熊谷市長)

「ほしい物リスト」でつながる応援する心:千葉市の試み
千葉市 熊谷俊人市長

千葉市は2019年、台風15号と19号の甚大な被害に見舞われ、多くの住宅の屋根が飛ばされたり、一部地域では、長期間にわたって停電を強いられたりしました。千葉市がほしい物リストでまず求めたのは、屋根を覆うためなどのブルーシートでした。備蓄はあったものの、それだけではとてもまかなえないくらいの数が必要になったからです。熊谷市長が自身のSNSで千葉市のウェブサイトに掲載した「ほしい物リスト」の存在を拡散。するとたちまち支援は集まり、翌日からAmazonの段ボールが市役所に届きました。

並行して各地の自治体に備蓄のブルーシートを提供してもらうように依頼もしました。しかし、備蓄品の発送には手続きが必要になるため、届くのは早くても数日後。すぐに必要な市民が大勢いるなかで、このタイムラグを埋めたのがほしい物リストで寄せられたブルーシートだったのです。

「商品を指定してリストアップできるのも、時間の経過とともに必要品が変わっていく災害支援にはマッチした仕組みだと思います。その後、停電の長期化が判明したため、もう一度、支援をお願いしたのがLEDランタンとヘッドライトでした。調理のときにヘッドライトがあると便利という市民の声があったからです」(熊谷市長)

現在、千葉市では動物公園と災害支援に加え、児童養護施設や乳児院で育つ子どもの支援にも活用しています。熊谷市長はほしい物リストの利点は、単なるモノの寄付にとどまらないと言います。

「ほしい物リストの存在を通じて、その地域がどのような状況に置かれているかを知っていただくことができます。SNSと併用すれば、市内や近郊だけでなく、全国に情報が伝わる。つまり、全国規模でその地域を応援する雰囲気を醸成できるようになるんです。それもボタン一つでできる手軽さがとてもいい。他の自治体でも、活用されるようになるといいのではないかと思います」(熊谷市長)

動物公園の存在価値を高めるモノをピックアップ

ほしい物リストはどのように活用されているのか、千葉市で最初に利用した千葉市動物公園の清田義昭副園長にお話を聞きました。

「今年、動物公園は開園から35年が経ちました。以前から、施設の老朽化や展示方法の刷新などが緊急の課題でした。解決策として2014年から始まったのが、『千葉市動物公園リスタート構想』です。動物公園の存在価値を高め、都市の活性化につながる観光施設としての再生を図ることを目指しました。ただ、アイデアはあっても予算は限られています。そこで、ほしい物リストを通じて支援をお願いしながら、動物公園のファンも増やしていきたいと考えました」(清田副園長)

「ほしい物リスト」でつながる応援する心:千葉市の試み
千葉市動物公園 副園長 清田義昭さん

動物公園のほしい物リスト第一弾が公表されたのは、2019年7月。ライオンの展示スペースに設置する「ミートキャッチャー」を実現するための、大型フックやワイヤー、滑車などの部品でした。展示スペース内の岩山と管理棟の2階の外壁にフックを設置し、2つの場所をワイヤーでつなぎ、管理棟の窓から滑車に取り付けた生肉をすべり落とすというアイデアの説明も希望商品の説明欄に掲載しました。

「野生のライオンは、獲物に跳びかかってエサを獲得します。管理棟の2階の壁と地面に部品を取り付け、その高低差を利用し、ロープーウェイのように生肉を滑り下ろせば、ライオンは絶好の獲物がきたとばかりに、生肉に跳びかかります。そのダイナミックな姿を来園者に見ていただきたかったのです。ライオンにとっても刺激になり、本来の生態を取り戻す時間にもなります」(清田副園長)

千葉市動物公園がほしい物リストを通して支援を呼びかけるものは、動物の飼育環境の改善に役立つものや園内の環境を向上させるものなど、対象分野を限定しました。一方、動物のエサや医薬品や事務用品など基本的な動物公園の運営に必須のものは対象外にしています。必需品は市の財政でまかないつつ、「来園されるお客様にいかに動物たちのいきいきとした姿を見せられるか」「お客様に快適にすごしていただくか」という点に目的を絞り、飼育員や売店のスタッフが考えたアイデアの実現のために、ほしい物リストが活用されているのです。

「今まではアイデアがあっても、予算編成の都合上、実現が1年先ということもありました。しかし、ほしい物リストでご支援いただけることで、たくさんのアイデアがタイムリーに実現できています。それがまたスタッフのやる気につながっているようで、次第にアイデアがたくさん出てくるようになりました。支援くださる方も、お気に入りの動物たちにプレゼントできることを喜んでくださっているようです。毎日のように通ってくださる熱烈なファンの方たちは、とてもよく観察されていますから、飼育員たちはその方たちに『何がいいと思います?』と聞いて、商品選びの参考にすることもあるんです」(清田さん)

千葉市動物公園では、ほしい物リストで商品を購入してもらったり、園内に設置されたりしたら、すぐにお礼のメッセージを公式Twitter @ChibaZooやホームページで報告します。それも、写真だけでなく、動物が使う様子や来園者からの反響も交えた、生き生きとした文章を添えているところが、千葉市動物公園ならではの工夫です。

「ほしい物リストは1つの商品をおひとりに買っていただくという1対1の支援ですが、効果は動物公園全体に及んでいます。そのことを支援してくださった方はもちろん、動物公園に関心を持って下さる方たちに伝えたいのです。多くの人に支えられていることをTwitterやホームページで発信することで、動物公園のファンを増やすことができればうれしいですね」(清田さん)

子どもと社会支援の関係をモノを通じて深める

千葉市では「ほしい物リスト」を子ども支援にも活用しています。児童養護施設と乳児院、母子生活支援施設で暮らす子どもたちのために活用する試みは、熊谷市長の発案でした。

2〜18歳までの約50人の子どもたちが暮らす児童養護施設ほうゆう・キッズホーム施設長の馬場敏さんは、「これまでも企業や団体に支援していただくことはありましたが、私たちのほうから、必要なものをリストアップし、個人の方に購入していただくのは、初めての経験でした。最初は本当に贈っていただけるのか、半信半疑でした」と打ち明けます。

乳児院エンジェルホーム施設長の古里美夏さんと、ほうゆう・キッズホーム施設長の馬場敏さん
乳児院エンジェルホーム施設長の古里美夏さんと、ほうゆう・キッズホーム施設長の馬場敏さん。手にしているのは、ほしい物リストに添えられていたメッセージカード。大切に保管されていた。

2019年末に千葉市が実施した「サンタクロース大作戦」で同施設が選んだものは、子どもたちに人気がある三輪車と自転車などでした。人数に対して台数が少なく、使用頻度が高いため、傷みが早い。しかし金額が高いため、支援をお願いしてよいか最後まで悩んだそうです。結果は、そんな心配をよそに、リストを公表したとたん、すぐに支援が集まりました。翌日から施設の玄関先には、新品の三輪車や自転車が届き、子どもたちは大喜びだったそうです。

古里美夏さんが施設長を務める乳児院エンジェルホームが「サンタクロース大作戦」のリストに掲載したのは、同年の台風被害で他の園に譲った使い捨ての哺乳瓶や液体ミルク、職員の負担が軽くなるおんぶひもなどでした。

これらの補充を市に依頼すると、予算や手続きの関係から届くまでに時間がかかります。しかし、ほしい物リストを通じてすぐに届いたことで、これまでより早く補充が可能になり、職員の負担軽減にもつながったので、ほっとしたそうです。

「通常予算ではまず必需品を優先させるため、なかなか購入できずにいた、絵本やDVDもお願いしました。なかには北海道在住の方が送ってくれたりして、反響の広がりの大きさに驚きました。ほしい物リストでは、絶対に必要とは言い切れないけれど、子どもたちの生活が豊かになる品をお願いできます。その豊かさが、子どもの成長にはとても大切だと思います」(古里さん)

子どもは成長が早いだけに、必要とされるものが時期によって変わってきます。2人の施設長はほしいモノがすぐに届くことは、とてもありがたいと口をそろえます。今年4月に実施した「新学期応援プレゼント大作戦」では、ほうゆう・キッズホームでは卓球台セットをリクエストしました。これが思いがけず、新型コロナウイルスの影響のため、外出の自粛を余儀なくされた子どもたちのストレス解消に役立ったそうです。

また、児童養護施設や乳児院は、子どもの保護と成長を最優先に考えているだけに、どこに存在しているのか、どのような支援が必要なのか、一般の人にはなかなかわかりにくいものです。

しかし、ほしい物リストを活用したことで、物質的なサポートだけでなく、子どもたちと支援する人たちの関係を深めるきっかけになっていると馬場さんたちは話してくれました。たとえば、リストに掲載された商品を見て、「同じ商品を持っているので譲りたい」と個人的な支援を申し出てくれたケースがあったそうです。

「ほしい物リストにはメッセージカードを添えられるサービスがあるのですが、たくさんの方が贈り物にカードをつけてくださり、子どもたちへの応援の言葉や、職員を気遣う言葉もいただきます。そうしたメッセージも子どもたちと私たち職員の励みになっています」(古里さん)

千葉市では、動物公園と同様に、「サンタクロース大作戦」「新学期応援プレゼント大作戦」でも支援を受けたお礼とメッセージの発信を写真と共にウェブサイトで紹介し、施設内の様子や子どもたちの様子も伝えています。それは、支援していただいた方へ感謝の気持ちを伝えるだけでなく、支援を受けている子どもたちと施設が社会とつながりを作ることにも役立っているのです。

熊谷市長は「ほしい物リストは、未来につながることに活用したい」と言います。

「ほしい物リストを通じてアイデアを出し合い、市民の皆さんの環境改善や暮らしを応援する。そして、支援していただいた方には、お礼の気持ちをお伝えする。さらに周囲の自治体が困っていたら、今度は自分たちが支援にいく。そうした循環が人を育て、社会をより良くしていくのだと思います」(熊谷市長)

千葉市動物公園のほしい物リストはこちら

AmazonブログのTopページへ