2019年4月7日、開成高校の有志団体「K-Diffusionors」による難民問題を考えるイベント「KD TOKYO 2019―難民問題はじぶんごと?」が開かれました(共催:認定NPO法人ワールド・ビジョン・ジャパン)。

「K-Diffusionors」とは、開成高校の現役学生が結成したチームです。「難民問題のリアルを感じ、同世代の学生たちと一緒に考えていく」をテーマに、今年1月に5名の学生が東アフリカ・ウガンダの難民居住地を訪問しました。今回はその活動を伝えるためのイベントです。

Amazonは協力企業として、彼らの活動の一部をサポートしました。会場となったアマゾンジャパンの目黒オフィスには約200名の参加者が訪れ、その大半が中学生や高校生でした。

冒頭、「K-Diffusionors」のメンバーが参加者に向けて訴えたのは、「すべての人に当事者意識を持ってほしい」ということです。

2018年時点で世界には約6850万人の難民がいるとされていますが、そのうち日本が難民として受け入れたのは20人(2017年)。日本政府に難民申請を出した人の中で、難民認定されたのはわずか0.2%だといいます。

「ぼくたちのチーム名の由来は、『Diffusion』(拡散)という英単語です。日本での難民に対する認知度の低さは大きな問題です。一人ひとりが難民問題を『じぶんごと』としてとらえて、世の中を考えていく。そんな意識を広めていきたいという思いからこの活動を始めました」とメンバーは話します。

高校生が見た難民居住地の今
「K-Diffusionors」のメンバー

基調講演(キーノートスピーチ)では、難民問題の現場を詳しく知る2人がスピーカーとして登壇しました。

1人目はフォトジャーナリストの安田菜津紀さん。フォトジャーナリストとは、写真を通して世界に今何が起こっているかを伝える職業です。「私が初めて難民問題に関心を持ったのは、皆さんと同じ高校生の時。カンボジアで人身売買の被害にあった子どもたちと話して、仲良くなったことがきっかけです」と安田さん。現地に行くことで、遠い国の難民問題が「自分の友達に起きている問題」に変わり、それに対してどうすればいいのかを考えるようになったと、自身の体験を振り返ります。

安田さんはこれまでの活動で出会った難民の人々を写真で紹介。さらに、かつて参加したNGO「国境なき子どもたち」による途上国派遣プログラムが現在も継続中であることを伝え、興味があればぜひ参加してほしいと参加者に呼びかけました。

高校生が見た難民居住地の今
基調講演を行った安田菜津紀さん(フォトジャーナリスト)

2人目のスピーカーは、WFP(国際連合世界食糧計画)で元アジア地域局長を務めた忍足謙朗(おしだりけんろう)さんです。WFPとは、紛争などによって飢餓が深刻な場所に早急に食糧を供給する機関のことです。

「今も世界で8億人がお腹を減らし、2~3秒に1人が栄養不足で亡くなっています。緊急援助は時間との闘いで、たとえルールを破っても必ず物資を届けなくてはなりません」と忍足さんは自身が行ってきた活動を紹介します。

「日本では『移民』と『難民』が混同されがちですが、実際は全く違います。難民とは、命の危険があって他国に逃げてきた人々です。残念ながら今の世の中には、不平等や貧困が確実に存在します。皆さんはまずそのことを知り、グローバルな目線を持って問題に向き合ってください」と語りました。

高校生が見た難民居住地の今
基調講演を行った忍足謙朗さん(元WFP)

続いては、「K-Diffusionors」のメンバーによる講演です。彼らは今年1月、ウガンダにある世界最大の難民居住地「ビディビディ難民居住地」を訪れ、1週間にわたって居住地で暮らす若者たちをインタビューしたと言います。初めにメンバー自身が撮影、編集したという15分間のビデオが流されました。

ビデオが終わると、ステージに「K-Diffusionors」の5名が登場。それぞれが訪問を通して感じたことをプレゼンテーション形式で発表しました。

居住地には現在約29万人もの南スーダン難民が暮らしていて、その大半が18歳以下の子どもです。ウガンダは難民政策が進んでいて、彼らの中には十分な教育を受けて大学進学を目指す人たちもいるとメンバーは解説します。

「難民居住地に行くと、すぐに200人くらいの子どもたちが集まってきて、ぼくらを取り囲んでくれます。どの子もいきいきとして楽しそうでした。もっと暗い場所だと思っていたのに、想像とはまったく違っていて驚きました」と話すのはメンバーの1人、村川智哉さんです。物に恵まれた自分の生活とは異なる環境の中での「幸せの基準」に気が付き、日本の生活について改めて考えるきっかけになったと振り返ります。

その一方で、インタビューしたほぼ全員が「自分の国が好きだから帰りたい」「離れ離れになった家族と会いたい」という願いを持っており、明るい中にも孤独を抱えていることを感じたと、村川さんは正直な思いを告白します。

「ポリオを患って歩けなくなった、エリザベスさんという13歳の女の子がいました。最初に会った時、ぼくは彼女のことをかわいそうだと思ってしまいました。でも話してみると彼女はすごくポジティブで、『自分のような人を助けるために将来は医者になりたい』という夢を聞かせてくれました」と話すのは、同じくメンバーの1人である平沼昌太郎さんです。

「自分の中にあった難民のイメージと、実際の難民の姿がまったく違いました。ぼくたちは普段小さな世界の中にいて、本当の情報を知らないのだと痛感しました。真実を知る方法は1つ、行動することです。自分自身が動くことで当事者意識が生まれてくるはずです」と平沼さんは会場に強く訴えかけました。

講演後、参加した学生たちを集めてのワークショップが開かれました。数名のグループに分かれ、今日の講演を受けての感想や、難民問題への意識を共有します。

ディスカッションの中では「このような場所に来るのは全国の中高生のうちのほんの一部で、それだけでは世の中は変わらない。例えば学校の必修科目の中で難民について勉強するなどして、全員が知識を持てるようにしたら良いのではないか」といった建設的な意見が活発に交わされました。

最後に、「K-Diffusionors」の新メンバーがステージに立ち、今後の展開について「ぼくたちと同じ志を持った中学生、高校生に参加してもらって、これから全国の学生たちの難民問題への意識を高めていきたい。一緒に日本の学生を変えていきましょう」と語り、新たなメンバーを広く募集しました。

アマゾンジャパンのパブリック・リレーションズ本部長の金子みどりは、今回の協力についてこう話します。

「最初にこの企画の話を聞いた時、彼らがプロジェクトに対して非常に意欲的であることがわかり、Amazonとしても彼らをサポートすべきだと感じました。高校生は決して子どもではなく、ある意味では私たち大人よりもずっと深く考え、ユニークなアイデアを持っています。彼らとのディスカッションは私たちにとっての新たな学びでもありました。

今回私たちは彼らへの支援として会場を提供したほか、主にイベントの受付などの運営面でアドバイスを行いました。AmazonはSTEM教育をはじめとした教育支援に注力しており、こういった意欲ある若者たちの取り組みを手伝えることを誇りに思っています」