「故郷の美しい自然が大好きです。おいしいカニを日本全国に届けることで、この町のすばらしさを多くの人に伝えていきたい」
株式会社加藤水産 代表取締役 加藤敏明さん

「お正月や夫婦の記念日、子どもの誕生日など、カニは特別な日に食べるもの。だから私たちがお届けするのは単なる食材ではなく、その先にある家族の団らんと笑顔なんです」と話すのは、加藤水産の代表取締役である加藤敏明(かとう としあき)さん。

加藤水産は北海道の弟子屈(てしかが)町に本社を置く企業。カニをはじめとした北海道産の食品の仕入れや製造、加工販売などを行っている。創業は1963年、漁師の家に生まれた加藤さんの父が、魚介類を行商してまわったことがきっかけで事業が始まった。

「弟子屈町は豊かな自然に囲まれた山あいの町で、すぐ近くには摩周湖(ましゅうこ)や屈斜路湖(くっしゃろこ)といった美しい湖があります。私たちの会社があるのは『川湯温泉』という温泉街です。創業当時はたくさんの観光客で賑わっていて、父は仕入れたカニを温泉街の旅館やホテルに卸していました」

北国からの贈り物本社
写真: 株式会社加藤水産提供

2人兄弟の長男として生まれた加藤さんは、大学進学と同時に地元の北海道を離れ、夢だった建築家を目指した。大学院を卒業後に東京の設計事務所へ就職し、公共建築や都市計画などの国家プロジェクトに携わることになる。

「仕事はとても充実しており、結婚して2人の子どもにも恵まれました。でも、私の頭の中にずっとあったのは故郷への思いです」

一時は「道東屈指の温泉街」として栄えた弟子屈町の川湯温泉だったが、1980年代半ばを過ぎると、目に見えて観光客が減っていった。加藤さんは自らの専門である建築の知識を生かして町の再建を計ろうと、地元の商工会などに呼びかけた。しかし、まだ若かった加藤さんの提案は、老舗温泉街の人たちには受け入れてもらえなかった。そうしているうちにも、廃業する旅館やホテルが相次いだ。

「地元にいない自分が旗を振るだけでは、いくらがんばっても町全体を良くできないと痛感しました。そこで、まずは自分がこの地でビジネスを成功させよう、そして弟子屈町を盛り上げていこうと考えたのです」

故郷を元気づける
代表取締役の加藤敏明さん

ちょうどその数年前から、加藤さんは自身が働いていた設計事務所の上司や同僚たちに向けて、加藤水産のカニを販売していた。

「たまたま会社の上司から『北海道のカニが食べたい』と言われて、実家の父にカニを送ってもらいました。その上司は『こんなに安くて良いカニが手に入るなんて!』と喜んでくれて、社内で『自分も買いたい』という人がどんどん増えていったのです。もしかするとこれはビジネスになるのでは? と思い至りました」

故郷を元気づける
室内にはカニの水槽が並ぶ。仕入れたカニは水槽に放流されて、茹でる直前まで鮮度が保たれる

1998年、加藤さんは独学でHTMLを学び半年かけてウェブサイトを作り、「北国からの贈り物」の屋号でカニのインターネット販売を開始した。加藤さんがインターネットで受けた注文を父親の加藤水産に連絡し、発送してもらうよう手配していた。初めての注文を受けたのは、サイトを立ち上げてから3カ月経った頃だった。

「実家の配送担当者は『たった1尾のカニをわざわざ梱包して送るのか』と半信半疑でした。当時の加藤水産は個人単位での通信販売をしておらず、地元の宿やレストランに直接卸すだけだったからです。最初の注文を受けたときには、本当にインターネットでカニが売れるのだと自分でも驚きながら、すぐに注文書のFAXを送りました。注文から2日後、お客様から『毛ガニが届きました。おいしくて子どもたちも大喜びです、ありがとう!』とメッセージが届きました。とてもうれしくて、パソコンの前で思わずガッツポーズをしてしまいました」

故郷を元気づける
タラバガニは秋から冬にかけて、オホーツク海沿岸の港で水揚げされる

同じお客様から「次はどのカニがいいか?」とメールで質問を受け、翌月にはズワイガニの注文を受けたという。「お客様とリアルタイムでコミュニケーションができるのは、インターネットならではのメリットです」と加藤さんは目を輝かせる。

そうして少しずつリピーターが増え、3年が経つ頃にはビジネスとして十分に採算がとれるようになった。2003年には「北国からの贈り物」を加藤水産のインターネット販売部門として法人化した。

全国各地から注文が殺到するようになっても、加藤さんは常に「受け取ったお客様の笑顔」をイメージすることを忘れていないと話す。

北国からの贈り物 茹で場
「茹で場」でカニを生きたまま湯に通す。摩周湖近くでとれた山の水を使用している
写真: 株式会社加藤水産提供

「Amazonでの販売を始めたのは2008年。しかし当時はなかなかうまくいきませんでした。カニのインターネット販売は『冷蔵・冷凍品の配送』『お届け日の指定』『ギフト注文』など、より複雑な配送の仕組みが不可欠だからです。本腰を入れて再スタートしたのは2015年のことでした」

加藤さんはAmazonの担当者に相談しながら、Amazonの配送システムに合わせた新しい物流体制を独自で構築した。

「相談にのってくれたAmazonの担当者の方々はとても意欲的でした。わたしたちは3年後を見据えたプランで売り上げを立てていくことを目標にプロジェクトを進めていきました。私たちにとって大きな挑戦でしたが、Amazonのノウハウを元にアイデアを形にしていく過程はとても刺激的で、事業の成長につながったと感じています」

故郷を元気づける
茹でたカニは冷水で冷やし、身を締めてうまみを封じ込める。さらに流水で洗って汚れと臭みを取り除く

Amazonでの販売を本格的に開始してから3年が過ぎた現在も、売れ行きは順調に伸びているという。

「Amazonで購入されるお客様の傾向として、品質やサービスなどの商品の価値をきちんと見極めた上で選ばれる方が多いと感じています。私たちが新鮮でおいしいカニを指定された日に確実にお届けしていれば、それはカスタマーレビューなどに反映されます。つまり、価値を認めてくださったお客様自らが商品の魅力を広めてくださることで、最終的に優れた商品だけが残っていくのです。自然と良い循環が生まれるので、ビジネスとして大変やりがいがあります」

故郷を元気づける
鮮やかな赤みを帯びたカニ

加藤さんはまた、自社で扱うカニの品質に確固たる自信を見せる。

「毛ガニ、タラバガニ、ズワイガニ、花咲ガニなど、カニにはさまざまな品種があり、季節によってとれるカニも異なりますし、水揚げされる港も変わります。私たちの会社がある弟子屈町は、釧路、根室、網走の3つの港町のちょうど中間地点に位置しているため、いわゆる『カニの集積地』として1年を通して新鮮なカニが集まるのです」

それぞれの港から仕入れたカニは、社内の水槽にいったん放流した後、茹でて冷凍したものが新鮮なうちに出荷される。この茹でる際の「水」も大切なポイントだ。山あいの弟子屈町の水はミネラル分が豊富なため、魚介特有の臭みがとれ、カニ本来の香りが際立つのだという。

「良いカニとは、外見がきれいなのはもちろんのこと、身がぎっしりと詰まり、みずみずしく、食べると口の中いっぱいにカニの甘みが広がります。私たちは数十年にわたって付き合いのある卸問屋と取引をしているので、品質の良いカニだけを港から仕入れています」

2018年に加藤さんは、父の跡を継ぐ形で加藤水産の代表取締役に就任。現在は北海道と東京、また海外を行き来しながら販売事業を推進している。

「お客様の食卓に『笑顔』を届けるのが私たちの仕事です。かつては北海道まで足を運ばないと食べられなかった良質なカニが、現在は日本全国のお客様に楽しんでいただけるようになりました。私たちのビジネスは、インターネット販売によって飛躍を遂げたのです。そして、この新たな産業を弟子屈町に根付かせることで、この町を愛する人たちを増やし、ひいては町おこしにつながってくれればと考えています。若い人たちからお年寄りまで、みんなが弟子屈町に誇りを持って暮らしていける環境を整えていきたい。これは私の一生をかけて続けていく、大きなチャレンジです。その実現に向けて、一歩を踏み出せたことをうれしく思います」

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故郷を元気づけるカニを売る元建築家