「私たちの仕事は、ハンガーを作ることだけではなく、ハンガーを通して得られる喜びや感動・満足という感情の変化だと考えています」
中田工芸株式会社代表取締役社長 中田修平さん

「創業者の祖父は、『ハンガーはふく掛けだ、洋服の服と幸福の福を掛けるんだ』と口癖のように話していました。その精神は祖父から父、そして私に受け継がれています」と話すのは、中田修平さん。兵庫県豊岡市にある老舗ハンガーメーカー中田工芸株式会社の三代目社長だ。

同社の創業は戦後間もない1946年。祖父の敏雄さんとハンガー職人との出会いからハンガーづくりが始まり、神戸など関西圏のテーラーへの行商から徐々に拡大し、百貨店やアパレル業界からの発注に応えることで成長を続けてきた。

ハンガーと一口に言っても、材質、形、色、用途など顧客の要望は様々。わずかな角度やカーブの違いでも印象が変わる。工場内に置かれた木型やサンプルの棚には、これまで制作してきた膨大な数のハンガーがひしめき合っている。

その豊富な経験の中から生み出された、中田工芸オリジナルのハンガーを「NAKATA HANGER」というブランドに昇華させ、それまでの企業間との取引だけではなく、一般のお客様への販売を本格化させたのが修平さんだ。

社長になる10年前まで、修平さんはニューヨークで仕事をしていた。子どものころから工場に行っては、ハンガーの製造工程を目にし、高校生のころにはお小遣い稼ぎでアルバイトをしたこともあったが、自分が社長になるという気持ちにはなかなか至らなかった。

「いつかは跡を継ぐかもしれないという思いは頭の片隅にありましたが、父からも特に家業を継げとは言われたことがなかったので、アメリカへ留学し、そのまま現地で就職しました。アメリカにわたって5年が過ぎた2007年に父から東京・青山にショールームを作るという話を聞いて、自分の海外での経験が生かせるのではないかと考え、帰国して手伝うことにしました」

福を届けるハンガー
老舗三代目の挑戦
中田修平さん 兵庫県豊岡市の本社にて

修平さんが帰国を決断した理由のひとつには、バブル崩壊後の不景気、2004年の台風23号による水害など、様々な困難を乗り越えてきた父親の孝一さんの姿を見てきたこともある。特に但馬地方を襲った台風23号による水害の被害は甚大で、工場のすぐ裏に流れる川が氾濫し、人的被害はなかったものの、工場はトラックの天井の高さまで水没。社員が一丸となって泥を掻き出し、1階にあった機械をすべて入れ替え、3か月間かけて操業を開始したが、その後結局、工場を建て直さざるを得なくなった。

当時アメリカで暮らしていた修平さんは、孝一さんから送られてきた水害の状況の写真を見て、「みんなが無事だったことに安心しましたが、駆け付けることができない悔しさを感じた」という。

2007年にアメリカから東京に戻り中田工芸に入社した修平さんは、父と共に青山のショールームオープンと自社ブランド「NAKATA HANGER」の立ち上げに尽力する。ブランドのロゴやパッケージデザインの選定を手掛け、用途に合わせたハンガーを統一したデザインでライン展開するなど、ブランドイメージを作り上げていった。

「それまでは、業務用の受注製品を何百本という単位で企業に収めていましたから、1本から個人のお客様にハンガーをお届けすることは私たちにとって初めての経験でした。お客様はどのような製品を望んでいらっしゃるのか、どうしたら当社の製品の良さを分かっていただけるか、どうしたらお客様に喜んでいただけるのか、社員とアイデアを出し合いました」

自社サイトを始めとしてインターネット販売にも注力し、2014年にAmazonでも販売を開始。2017年には、Amazonが商品の保管・受注・発送・カスタマーサービスまで行うフルフィルメントby Amazon(FBA)の利用を開始した。

「新たなお客様との出会いを求めて、Amazonでも販売を開始しました。FBAを利用することで、送料を無料にすることができ、納期も短縮できるため、お客様の満足度を高めることができています。Amazonでの販売を開始してから、当社のインターネット販売の売り上げが大きく底上げされました。自社サイトでの売り上げも継続して伸びています」

アパレル業界では、春と秋のシーズンに向けて新規ブランドの立ち上げや店舗の改装が行われる。そのため、ハンガーの受注生産のピークは夏と冬に集中していた。しかしオリジナルブランドを持ち、個人のお客様向けにインターネット販売を開始したことで、通年で安定した生産ができるようになった。

「定番商品の販売が増えることで、計画的な生産ができるようになったことは、経営の安定化にとても大きな意味があります。また、FBAを利用することで梱包や出荷に伴う業務の効率化と時間の圧縮が可能となり、そこから生み出せた時間を別の作業に充てたり、社員の残業を減らすことができたりしています」

37歳の若さで社長となった修平さん。会社として成長するだけでなく、社員一人一人の夢の実現を支援することを目標に掲げ、女性リーダーの育成や、男性の育休取得にも積極的に取り組んでいる。今年の夏には、第二子の誕生に合わせて社長自ら育児休暇を取得した。

国内一流ホテルの客室や、山陰・山陽を巡る豪華寝台特急・瑞風の車両にも採用されるなど、NAKATA HANGERのブランド力はますます高まっている。修平さんのさらなる目標は、海外進出だ。

「入社当初から、ファッションの中心地であるニューヨークやロンドンで販売することを目指してきました。私たちの仕事は、ハンガーを作ることだけではなく、ハンガーを通して得られる喜びや感動・満足という感情の変化だと考えています。ハンガーは、世界で日常的に使われているものですから、海外展開しやすい商材です。しかし、その一方でスーツを知り尽くした海外のお客様にも認めていただかなくてはなりません。Made in Japanの製品として誇れるよう、これからもお客様の心を動かすことができるより良い製品を作り続けていきたいと思います」

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